とろみ剤の比較

2種類のとろみ剤の 嚥下しやすさを比較

伸長粘度と緩和時間を測定し、とろみ剤による飲み込みやすさの違いを評価した事例です。


概要

とろみ剤は、食品の粘度を上げることで、嚥下困難者の肺に食品が入りにくくし、飲みやすくするためのものです。

本事例では、傾向の異なるA・B 2種類のとろみ剤について、伸長粘度計(キャピラリー破断方式レオメーター Thermo Scientific™ HAAKE™ CaBER1)とTD-NMR Spectrometer Spin trackを用いて、性質の違いを数値化して比較しました。

とろみ剤A

ダマになりやすく、嚥下しにくい傾向を持つとろみ剤

とろみ剤B

嚥下しやすく、とろみ剤Aよりも利用者からの評判が良いとろみ剤

使用装置

伸長粘度計 Thermo Scientific HAAKE CaBER1

Thermo Scientific™ HAAKE™ CaBER1

実験

1

10mLの蒸留水に、とろみ剤0.1g、0.2g、0.3gをそれぞれ加え、スプーンで攪拌しました。

2

10mmφ・40mmのガラス製試管に分取し、30℃でCPMG法による測定を行いました。

伸長粘度測定の結果

飲料が引き伸ばされる際の粘度変化から、嚥下時のまとわりつきやすさを比較しました。

とろみ剤Aととろみ剤Bの伸長粘度とひずみ量の関係

伸長粘度とひずみ量の関係

測定結果

とろみ剤A

・粘度曲線が全体的に大きく傾いて得られました。

・粘度曲線に2コブあるいは3コブと、複数のコブが見受けられました。

・粘度曲線が濃度間で互いに重なって得られました。

とろみ剤B

・粘度曲線の傾きが小さく、平坦に得られました。

・粘度曲線は濃度間で互いに重ならず、濃度と粘度値が比例関係に近く得られました。

考察

とろみ剤A

ひずみの増加に伴い増粘しているため、嚥下時に飲料が引き伸ばされるに従って、まとわりつく・引っかかるなどの感触の要因となり、飲みにくさにつながっていると考えられます。

粘度曲線のコブの数だけ緩和構造の存在が示唆され、サンプルの白濁物やダマの起因となっている可能性が考えられます。

とろみ剤B

ひずみ硬化が起きにくく、ニュートン流動に近いことを示しているため、嚥下時に飲料がまとわりつく・引っかかるなどの感触が得られにくく、飲みやすさにつながっていると考えられます。

TD-NMR測定の結果

緩和時間の違いから、とろみ剤の運動性や構造の違いを確認しました。


緩和カーブ

得られた緩和カーブを以下に示します。

とろみ剤Aととろみ剤Bの緩和カーブ

とろみ剤A・Bの緩和カーブ

濃度による緩和時間変化

とろみ剤濃度による緩和時間の変化を、以下のグラフに示します。

とろみ剤濃度による緩和時間変化

とろみ剤濃度と緩和時間の関係

測定結果

とろみ剤A

とろみ剤Bより、緩和時間が短く得られました。

とろみ剤B

・とろみ剤Aより、緩和時間が長く得られました。

・とろみ剤Aと比べ、濃度による緩和時間変化が小さく得られました。

考察

とろみ剤A

ゲルの構造化によるネットワークが多く存在し、かつひずみ硬化がしやすいことで、嚥下しにくいとろみ剤であることが示唆されました。

ダマを作りやすく扱いづらい傾向があり、これはゲルの構造化によるネットワークがより多く存在することに起因すると予測されます。

とろみ剤B

濃度による緩和時間変化が小さいことから、濃度が多少変化しても、とろみが大きく異なることはないと予測されます。

食品にとろみを持たせる現場では精密な秤量が困難な場合も多いため、大まかな調製であっても大きな違いがない均一な状態を作成しやすいことが、扱いやすさにもつながっていると考えられます。

総合考察

伸長粘度と緩和時間の双方から、とろみ剤による嚥下しやすさの違いを確認しました。

伸長・延伸による構造変化のイメージ

伸長・延伸による構造変化と緩和挙動のイメージ

伸長粘度と緩和時間の測定により、とろみ剤の種類による嚥下しやすさの理由を数値化することができたと考えられます。

実験協力: Surfgauge INSTRUMENTS 様

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