【概要】
セメントは水と混合し水和により凝結することが知られており、凝結の際に水和熱が発生するため、凝結時間をカロリーメーターにて測定する方法が知られていますが、パルスNMRにて簡便に凝結時間の比較が可能か実験を行いました。
セメントに水のみを加えたもの、および水と凝結遅延調整剤を加えた2種類の分散体の緩和時間を測定しました。
測定にはTD-NMR SpinTrackを用いました。
得られた緩和時間からセメントの硬化遅延メカニズムと硬化遅延時間の予測をすることができました。
【実験】
- セメントが50wt%になる様に水を加えたもの、およびセメントの凝結遅延調整剤を加えた分散体2種類を用意しました。
- 60℃において、それぞれの粘度および緩和時間T1を測定しました。
◆カロリーメーターを用いたセメント凝結遅延の評価例◆
◆パルスNMRを用いた凝結遅延時間の予測◆
最初に、レオメーターを用いて測定した粘度とせん断速度の関係を示します。
結遅延剤を添加した分散体の方が低せん断域での初期粘度が10倍ほど大きくなりました。
次に、TD-NMR SpinTrackを用いて測定した緩和時間T1と経過時間の関係を示します。
凝結遅延剤を添加した分散体の方が初期粘度が大きかったのに対し、緩和時間T1はセメントと水のみの分散体の方が短く得られました。
【結果】
1.凝結遅延剤を添加した分散体の方が低せん断域での初期粘度が10倍ほど大きくなりました。
2.初期の緩和時間はセメントと水のみの分散体 の方が短く得られました。
3.どちらの分散体も継時とともに緩和時間が短くなりました。
【考察】
- 粒子が含まれない場合、粘性が高い物質のほうが緩和時間(T1)が短く得られます。
しかし反対の結果が得られました。
このことから凝結遅延剤はセメント粒子に吸着し水の拘束を阻害する性質があると考えられました。
2.凝結による運動性の低下を継時で簡便に数値化する事が出来ました。
→パルスNMRを用いることにより、硬化遅延メカニズムと硬化遅延時間を簡便に予測することができました。