HSP評価への応用

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緩和時間からハンセン溶解球の算出

[概要]
異なる表面処理を施した酸化亜鉛粉末を複数の溶媒に分散させ、緩和時間T2を測定しました。
測定にはMagnoMeter SEDを用いました。
得られた緩和時間をもとにハンセン溶解球を算出し、界面特性を数値化しました。

~HSPとは~
Hansen Solubility Paramete:ハンセン溶解度パラメーター
hansen博士が提案した、物質の溶解性を示す指標です。
物質の凝集エネ ルギーを構成している相互作用力を分散力項(δD)、双極子間力項(δP)、水素結合項(δH)の3つのパラメーターに分割し、次式を定義しました。
  δ2δD2 + δP2 + δH2
これら3つのパラメーターを3次元座標に置いたとき、対象となる物質の距離が近いほど互いに溶解しやすいことを示しています。

[実験]
1. 表1の表面処理を施した3種類の酸化亜鉛粉末を、表2の溶媒に分散させました。

表1 酸化亜鉛粉末の表面処理方法

緩和時間からHSPを算出


表2 使用した溶媒一覧
緩和時間からHSPを算出


2. MagnoMeter SEDを用いて緩和時間T2を測定し(CPMG法)、Rsp値を算出しました。

Rsp値とは緩和時間の変化割合のことで、Rsp値が大きい程濡れ性が良いことを示します(緩和時間を分散性や比表面積に換算する理論⑥式参照)。



[結果と考察]
シリカによる表面処理、シランカップリング剤による表面処理を施した2種類の酸化亜鉛粉末の溶媒に対するRsp値のグラフを示します。


    
図1 酸化亜鉛粉末の各溶媒に対するRsp値


シリカコート粒子はシランコート粒子より、Rsp値が大きく得られました。
また、両粒子とも分散させた溶媒によって濡れ性が大きく異なることがわかりました。
シリカコート粒子について、
NMP (7.10) > MeOH (2.89) > Toluene (0.12)となり、
この結果からNMPに対しては濡れ性が良く、トルエンに対しては濡れ性が良いことがわかり、NMPが分散に最も適した溶媒であることが示唆されました。

シランコート粒子は表面が疎水性のため、非極性溶媒にも濡れ性が悪いことがわかります。したがって添加材を使用しない限り非極性溶媒でも安定した懸濁液を作ることは困難ということが示唆されました。

シリカコート粒子のトルエン、メタノール、NMPへの分散直後と、4時間静置後の様子を示します。

図2 シリカコート粒子の濡れ性

4時間後の様子から、次のことが示唆されました。
トルエン懸濁液:分離・凝集している→濡れ性も分散安定性も悪い
メタノール懸濁液:沈殿物あり→濡れ性は比較的良いが分散安定性は悪い
NMP 懸濁液: 沈殿物なし→濡れ性も分散安定性も良い

次に、各酸化亜鉛粒子のTEASプロットを示します。

図3 TEASプロットからHSPの決定


コートなしとシリカコート粒子のHPSは近い値が得られましたが、シランコート粒子は異なる結果となりました。


シリカコート酸化亜鉛の各溶媒のHSP値を3次元空間にプロットし、DMFからMeOHまでを良溶媒、EtOHからトルエンまでを貧溶媒としてハンセン溶解球を決定しました(NMPは良い結果が得られなかったため、除きました)。
緩和時間からHSPを算出

図4 シリカコート酸化亜鉛のハンセン溶解球

→以上よりパルスNMR測定で得られた緩和時間からハンセン溶解球を決定し、界面特性を数値化することができました。
界面特性を数値化することでその後の作業効率向上が可能となります。


[参考文献]
Fast NMR relaxation, powder wettability and Hansen Solubility Parameter analyses applied to particle dispersibility
David Fairhurst, Ravi Sharma, Shin-ichi Takeda , Terence Cosgrove, Stuart W. Prescott



リンクのご紹介

ハンセン溶解度パラメーターが算出可能なソフトウェアHSPiPのご紹介
パルスNMRから得られた緩和時間によるHSPの算出動画のご紹介pirika.com
 ハンセン溶解度パラメータ・ソフト(HSPiP)上級開発者 山本博志先生
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